子どもの頃の遊び場と言えば神社の境内だった。
鬼ごっこをしたり、缶けりをしたり、グリコ遊びをしたり、陽が沈むまで遊んだものだ。
少し大きな神社になると神社の境内だけでなく、一般道がかつての参道だったこともあり、お祭りともなれば道の脇には露店が並んだ。
そんな記憶があるから神社に行くと子どもの頃を思い出すことが多い。
また神社は小高いところにあり、その参道は階段だった。子どもの頃は、その階段でじゃんけんをしながら遊んだ。
そんな想い出を鮮明に思い出させてくれる場所がある。
札幌伏見稲荷神社の旧参道だ。
外国人にも人気の札幌伏見稲荷神社
朱い鳥居が26基立ち並ぶ参道で外国人も多く訪れて人気の観光スポットになっている札幌伏見神社。
何度か訪れているが、訪れて外国人がいない時は無いほどいつも外国人が訪れている人気の神社だ。
最近は御朱印ブームで訪れる日本人観光客も多くなっている。
写真の鳥居が立ち並ぶ参道の前も参道が続いていることを知らない人が多い。
振り返ってみると、木々が茂っている。近づいて見てみると舗装されていない道があるのがわかる。
札幌伏見稲荷神社の旧参道
札幌の路面電車駅である「西線14条駅」から西に進んでいくと幌西自転車公園がある。
Y字の交差点になっている公園の先端に「北海道総本宮 伏見稲荷神社」と刻まれた社号標が設置されている。
横に刻まれた文字を見てみると「昭和三年十一月十四日」となっている。昭和3年は1928年だから90年以上前に建てられた社号標だ。
札幌伏見稲荷神社が現在の場所に遷宮されたのは1907年(明治40年)だから遷宮されてから21年後にここに社号標が設置されたことになる。
設置された理由は、昭和3年10月に昭和天皇の即位式が京都御所で行われた記念である。
当時、社号標が出来てから、しばらくはこの辺りの人にとっては、ここからが札幌伏見稲荷神社の参道になったと考えられる。
ここから札幌伏見稲荷神社の鳥居までは直線距離で約600メートル、本殿までは約800メートルある。
きっとこの道を通って、札幌伏見稲荷神社まで参拝に向かったのだろう。
この道を通って札幌伏見稲荷神社へと向かった。
近づいていくと茂った木々が近づいてきて、階段が見えてくる。
木々に覆われ階段の全体像が見えない。
冬場になれば木々の葉が落ち、階段の全体像がわかる。
百段近くはあるだろうか。長い階段が続いている。
見上げてみると鬱蒼と茂った木々に長い年月のためかかなり歪んだ階段が伸びている。
階段の横には「伏見開村 五十年記念」と書かれた石碑が置かれている。
いつ建てられたものかわからないが、大正12年か13年頃に現在地に立て直したものという記述が「さっぽろ歴史散歩」という著書にかかれている。
仮にそうだとすると、今の伏見町付近の元となる「四軒村」が1871年(明治4年)に開拓されはじめたので、それから50年後の1910年(大正10年)頃に建てられたものだと考えるのが妥当であろう。
そうなると100年以上前に作られた石碑となる。
ただこの旧参道となる階段がいつ作られたものかは不明だが、大正時代には、この階段の前進となる参道がここにあったのだろう。
所々、傷んでいる階段をゆっくりと上っていく。
アスファルトで補強されているが、所々欠落している。
また階段そのものが大きく湾曲しているところもあり、しっかりと下を見ながら歩かないと転びそうになる、少し怖い階段だ。
ただ、このように苔むした傷んだ階段に、時の流れを感じずにはいられい。
きっと昭和の中頃までは、ここを通って参拝に向かう人も多かったのではないだろうか。
車に乗っている人はまだ少なく、市民の交通手段は徒歩か自転車か、バス・路面電車だった時代のことだ。
ひょっとしたら今の50~70代の人なら子どもの頃に、この階段でグリコ遊び(じゃんけんで勝った手組でグリコ・チョコレート・パイナップルの文字数分だけ階段を上れる遊び)をしていたかもしれない(グリコ遊びは戦前の1930年代には既にあったとされている)。
こういう古い階段を見ると、子どもの頃、神社境内の階段でグリコ遊びをしたのを思い出す。
グリコ!
チヨコレイト!
パイナツプル!
小書き文字を敢えて大きく発音したものだ。
グリコ遊びもいろいろな地域ルールがある遊びだが、札幌にも独自のルールがあったのだろうか?
そういえばもう、しばらくグリコ遊びをしている子どもたちをみかけていない。
今は、もうグリコ遊びを知らない子さえいるのかもしれないとも思った。
登り終えて振り返ると夏場であれば木々で来た道を見ることが出来ないが春先までなら木に葉が無いため遠くまで見ることが出来た。
荒い息をしながら来た坂道と旧参道を振り返った。
ただ、これほど階段が傷んでいるとグリコ遊びをするにしては危険だ。
使う人が少なくなったから手入れもされなくなったのだと思うが、荒れた階段を見て、寂しく感じた。
きっとあと数年後にはこの階段も危険のため閉鎖されているかもしれない。
そう思うと秋になったら、またこの階段を上ってみようと思った。
長い階段を上り終えると少し歩くとまた10段ほどの階段があり、この階段を上ると札幌伏見稲荷神社の鳥居が見えてくる。
最後にまた10段ちょっとの階段を上り、押ボタン式の信号を渡れば札幌伏見稲荷神社だ。
苦労して歩き、上ってきた階段の分だけ、ご利益も大きくなるように思いながら参拝をした。
札幌伏見稲荷神社 旧参道へのアクセス方法・行き方
旧参道を全行程歩く場合、札幌市電(路面電車)「西線14条駅」から徒歩5分ほどの距離の幌西自転車公園からがスタート地点となる。
詳しいルートは下記の地図を参考にして欲しい。
なお冬季は階段は閉鎖されるので雪解けとなる4月中旬くらいから雪が降る前の10月くらいまでの間しか通れないので注意して欲しい。
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